「えぇ、もちろんよ。何時に来る?」


先生は取り繕うように明るい声で言った。


「私は何時でも大丈夫です。先生のご都合がいい時間は?」

「そうねぇ。そうしたら明日は午後の方が助かるわ」

「わかりました。では、午後1時くらいに行ってもいいですか?」

「えぇ、大丈夫よ。来たらいつもみたいに玄関のベルを鳴らしてね」

「わかりました」

「あの、俺もご一緒させてもらってもいいですか?」


信広さんがフロントガラスに顔を向けたまま言った。


「ご存知だとは思いますが、俺も凛々子さんと同じ梢田中学の卒業生なんです。取り壊される前に、あの旧校舎をもう一度この目で見ておきたいと思いまして」


一拍置いてから、私は「ぜひ」と答えた。


不思議と抵抗感はなかった。むしろ一緒にいてほしいと思った。


信広さんは微笑んだだけで、それ以上何も言わなかった。先生も何も言わなかった。私も、何も言わなかった。