「お、おやすみなさい」

 声にならない声を喉から絞り出し、隠れるようにして急いでベッドに潜り込んだ。

 穴があったら入りたい。冷たい布の感触にライラは身を丸くする。

「ライラ」

 しかし不意に名前を呼ばれ、体がびくりと震え意識がそちらに向いた。

「あの馬に関しては、正直持て余してたんだ。だから感謝してる」

 ライラはなにも答えられなかった。ただ溢れ出そうな想いを抑えるために胸元でぎゅっと握り拳を作る。

 スヴェンはいつも絶妙なタイミングでライラの気持ちを見透かしたような言葉をくれる。前は純粋に喜ぶだけだったのに、今はそうもいかなかった。

 どうしてなのかはわからない。嬉しい気持ちと同時に切なさで胸が張り裂けそうになる。

 優しくするのも、キスをしたのも、家族として、夫婦として、なにより妻として自分を見てくれているからなのだとしたら。

 この関係は、そう長くはない。終わることも決まっている。

 だから、なのかな?

 暇つぶしでも、気まぐれでも、彼なりの配慮なのだとしても、どれも本物ではない。その事実にライラは体の奥が締めつけられるように痛んだ。

 痛みも、痛みの原因さえも目を背けたくて、ライラは強く目をつむる。しかし心臓の音がやけに煩くてなかなか眠れそうもなかった。