明るくなくて残念のような、有り難いような。朱に染まる自分の頬を見られないですむのはよかった。こんな顔を見られたら、またからかわれてしまう。

 それにしても――。

「スヴェンは、なんで急に私に……キス、したの?」

 今までそんな素振りひとつ見せなかったのに、なにがきっかけでこうなってしまったのか。スヴェンの態度にライラは戸惑いが隠せない。

「さぁ? お前の理論でいえば俺たちは家族であり夫婦だからな。なにより結婚したんだ、お前は俺のものだろ」

「自分のものだったら好きにキスしていいの?」

 急降下したライラの機嫌は声にも表れる。キスする理由として不適切だったのか、思わず“もの扱い”してしまったことに対してか。

 スヴェンは一瞬言葉を迷い、観念したように告げた。

「可愛い妻に口づけてなにが悪い?」

 束の間の静寂がふたりの間を流れ、ライラは溜めていたなにかを発散するかのごとく大袈裟に首を横に振った。

「えっ!? わ、私……」

「ほら、さっさと寝ろ。疲れているんだろ。なによりその格好でうろうろしていると風邪を引くぞ」

 そこでライラは、いつのまにかローブを脱がされていたことに気づいた。薄い夜着一枚は肌寒く、なにより露出度が高い。

 今は寒さよりも羞恥心で血が沸騰しそうに熱いのだが、さらに体温が上昇した気がした。