「なぜ?」

 ところが、ライラの心情などおかまいなしにスヴェンは突っついてくる。

「なぜって……そんなのわからないよ。スヴェンこそ、どうしてなの?」

 彼はどういう気持ちだったのか、なにを考えていたのか。口づけてきた理由を知りたくて質問したが、スヴェンはあっさりとかわす。

「どうしてだろうな」

 はぐらかしたスヴェンの返答に多少腹を立てつつライラは自分の気持ちも整理しながら、心の中で結論づける。

「スヴェンも……私のこと嫌いじゃない?」

 ヴェンからからの口づけを嫌な気持ちにならずにいられたのは、彼を嫌いではないからだ。それだけははっきりと言える。

 その論理でおそるおそる尋ねると、スヴェンは意表を突かれた顔をした後でわずかに目を細めた。

「そうだな」

「そっか……よかった」

 肯定され、安堵の息を吐くのと共にライラは笑った。仮初めの関係とはいえ、嫌われるよりは嫌われていない方がいいに決まっている。

 ライラの心は春の陽気のようにぽかぽかと温かくなり、満たされていた。スヴェンに嫌われていないという事実だけで頬が緩んでしまう。ずいぶんと身勝手なことされたというのに。

 スヴェンはゆっくりと体を起こした。ライラの視界が開け天井が顔を覗かせる。ベッドに肘をつき同様に上半身を起こした。それを待っていたかのようにスヴェンは話を振る。