冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

日が落ちるのもずいぶんと早くなってきた。スヴェンが業務を終え自室に向かうと、ライラは約束通り起きて待っていた。

 ベッドに腰掛け、両腕を思いっきり上に伸ばしたり、自身の肩をほぐしたりしている。

「スヴェン、おかえりなさい。お疲れさま」

 スヴェンを視界に捉え、ライラは明るく声をかけた。彼女の服装はいつも通り薄い夜着にローブを羽織っている。

「寝違えたのか?」

「まだ寝てないよ」

 からかい交じりのスヴェンにライラはむすっとして答える。

「ホッとしたからかな。今になって体中の関節とか筋肉が痛くなってきちゃった」

 湯浴みの際も体をほぐすようにじっくり浸かったのだが、どうも違和感が拭えない。それも今更感じるのだから、ライラとしてはおかしかった。

「今回の件、ずっと黙っていてごめんね」

 思い出したようにライラはスヴェンに謝罪する。自分の肩に回していた手を膝の上に戻した。

「べつに。大方予想はしていた。お前は単純だからな」

 その回答に安心するべきか、怒るべきか。ライラが反応に困っている間、スヴェンはゆっくりとベッドに近づく。そしてライラの正面に立った。

「ただ、あの馬を手なずけるのは相当な手間だっただろ」

 ライラは視線を落とすと、悲しげに笑った。

「そんなことないよ。……なんていうのかな、私の自己満足。勝手にあの子を自分と重ねたの」

 人間を拒否する姿は、この瞳についてあれこれ言われて心を閉ざしていた自分を思い出す。傷つくくらいなら最初から深入りしない方がいい。