冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「わかった、使おう」

 瞬時にライラは花が咲いたように顔を綻ばせる。

「ありがとう!」

 エリオットと目を合わせ、彼の補助を受けて、ライラは慎重に馬から降りた。

「よかったな、ライラ」

 安堵した表情のエリオットにライラは嬉しさのあまり思わず抱きついた。彼の首に細い腕が回される。

「ありがとう、エリオット! あなたのおかげよ。本当にありがとう」

「ラ、ライラ」

 感情を爆発させ、今にも飛び跳ねそうな勢いのライラにエリオットは困惑する。

 幼馴染みの抱擁を今は年齢的にも立場的には素直に受け入れることはできない。慌ててライラを自分から引き離す。

「ライラ、お互いにもう大人なんだから。昔みたいに簡単に抱きしめたりキスするのはなしだよ」

「ご、ごめんなさい」

 冷静に指摘され、ライラは顔を赤らめながらエリオットから距離を取る。

「とりあえず、その馬を戻してこい」

 スヴェンの言葉を受け、エリオットが馬を馬房につれていく。その後姿を見送り、ライラはスヴェンに向き直った。

「スヴェン、ありがとう。あの子をよろしくお願いします。私を乗せられるくらいだもの。きっと慣れている人が乗ればもっと」

「お前は、あの馬のためにここで時間を割いていたのか?」