冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

つい棘を含んだ言い方になる。ここでライラが乗馬の練習をしているとは思っていたが、なにも初心者向けとは思えない気難しい馬を相手にする必要はないだろう。

 ここでマーシャの言い分が、腑に落ちる。これは見ている方も気が気ではなかったに違いない。どうしてよりによってその馬を選んだのか。

 まだなにか言おうとしたスヴェンにライラから意外な言葉が投げかけられる。

「この子、これでアルノー夜警団の馬として使ってもらえる?」

 声に出す直前で言葉が思わず引っ込む。ライラを見れば窺うような、まるで子どもが親になにかをお願いするような表情だった。

「きっと人間に怖い思いをさせられたんだと思う。最初は鞍や鐙とか馬具をつけるのも大変で……。でも大丈夫だってわかったら順応になって、頭も良くて動きも機敏だし、いい子なの。ちゃんと訓練したら、もっと色々なことができて役に立つと思う。だから……」

 たどたどしく説明してくるライラにスヴェンは自身の言葉を思い出す。

『どんなに素質があっても人さえ乗せられないなら、ここでは役立たずだ』

 どうやらライラが本当にしたかったのは、自分が馬に乗れるようになることではなかったらしい。

 気づけば馬のそばにいるエリオットも隣にいるマーシャもスヴェンの返答を緊張した雰囲気で待っているのが伝わって来る。スヴェンはおもむろに息を吐いた。