冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

彼らの背中を見つめながらルディガーは呆然としたままだった。ややあって込み上げてくるのはなんともいえないおかしさだった。

 珍しい光景に遭遇したものだ。得したような、信じられないような。

 こちらの思っている以上に上手くやっているのかもしれないな。

 心の中でひとり納得し、ルディガーは先にセシリアの待つ仕事部屋へと足を進めた。

 夏に比べると同じ時間帯でも太陽の位置が低くなり、照らす力も少し弱くなった。秋の訪れは、ちょうどいい気候と共にときに肌寒さももたらす。

 植物も徐々に色づきはじめ、湿っぽい草花の匂いが鼻を掠めた。アルント王国は夏から冬への移り変わりはあっという間で、秋を感じる時間は貴重だった。

 ライラがスヴェンを連れてやって来たのは、予想通り厩舎だった。しかし中に入ることはなく入口で待つよう指示され、スヴェンはおとなしく従う。

 同じように待機するマーシャと並び、スヴェンは前を向いたまま彼女に話しかけた。

「連日、ここに通い詰めていたのか」

「ええ。怪我をされないかと、いつも肝を冷やしておりました」

 マーシャの反応で、スヴェンは自分の考えが当たっていたと確信する。ライラがここでなにをしていたのかはおおよそ予想がついていた。

「付き合わせて悪かったな」

 抑揚のない言い方だったが、スヴェンの発言にマーシャは大きく目を見開いた。なにも返せずにいること数秒間。微妙な間合いを不審に思ったスヴェンが眉を寄せ、顔を横に向けた。