冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「やあ、ライラ。君も外にいたのかい?」

「はい。こんにちは、エルンスト元帥」

 ライラはわずかに膝を折り、ルディガーに挨拶をした。しかし、その視線の先はすぐにスヴェンに向けられる。

「スヴェン。忙しいとは思うんだけれど、今日どこかで少しだけあなたの時間をもらえないかしら?」

「時期が来たのか?」

「うん。お待たせしました」

 息を弾ませて笑顔のライラに対しスヴェンはいつも通りだ。ふたりの温度差をそばで感じ、ルディガーはなにも言わずに成り行きを見守る。

 そこに肩で息をしながらライラを追いかけてきたマーシャが現れた。

「ラ、ライラさま、先にひとりで行かれないでください。老体に鞭を打ちましたよ」

「ご、ごめんなさい。スヴェンたちを見かけて、つい……」

 走り出してしまったことを顔面蒼白で詫びながら、ライラはマーシャの体を心配する。なにやら場が騒々しくなってきた。

「少し落ち着け」

 呆れた面持ちでスヴェンがライラの頭に手を置き、続けてルディガーに向き直った。

「ルディガー。悪いが少し席をはずす。先に行っておいてくれ」

「あ、ああ」

 まさかの展開にルディガーは呆気にとられながらも生返事をした。驚いたのはライラも同じだったらしい。

「今いいの? 急がせるつもりは……」

「かまわない。ほら、どこに行けばいいんだ?」

 目をぱちくりとさせるライラをスヴェンは面相くさそうに促す。けれどライラはすぐににこやかな笑顔に戻り、先を歩き出した。