冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

数日後、訓練場での剣の稽古を終えたスヴェンとルディガーは城内に戻ろうとしていた。

「冬が本格的に訪れる前に、今年も一度迎冬会を開催するらしい」

「そうか」

 迎冬会は本格的な冬の訪れの前に城で開催される舞踏会だ。上流階級の貴族たちはもちろん、王家に関係する者など多くの者が参加する。

 冬の間はどうしても皆、外に足を運ぶのに二の足を踏みがちだ。なのでこの機会に情報交換や近況報告などを兼ね、それぞれの野心を達成する場にもなっている。

 もちろん純粋に出会いを期待する者たちも少なくはない。

 軽く返したスヴェンにルディガーはさらに補足する。

「それに合わせて大広間の改装をするそうだ」

「業者の…城への外部者の出入りもそれなりにあるわけか」

 当日の警護はいざしれず、準備段階から気を抜けそうにない。城へ入場する際に全員の身分を確かめた上での作業となるが、どこまで信頼できるかは謎だ。

「とくに今は彼女がいるだろう」

 ルディガーが遠慮がちに話題を振る。“彼女”というのはもちろんライラのことだ。先日のこともあり、スヴェンの反応を窺っているところでうしろの方から声がかかる。

「スヴェン!」

 ルディガーも名前を呼ばれた本人も素直に振り返る。装飾が控えめなワインレッドのワンピースを身に纏ったライラが笑顔でこちらに駆け寄ってきた。

 裾が広がりを見せ、彼女が足を動かすたびにゆるやかに揺れる。長い栗色の髪はひとまとめにされ、左目は髪で隠されているがすっきりとした印象だ。