冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

ライラの温もりを感じながら、第三者たちにかけられた言葉を思い出す。

『彼女自身、自分の運命に翻弄されている身だ』

『ライラさまは一生懸命で優しい方です』

 まるでわかっていないという言い草。そんなことはない。自分はとっくに……

「知ってる」

 言われなくても、口にしないだけでちゃんとわかっている。憐れんでやればいいのかと皮肉で返してみたが、その必要がないのも。

 彼女自身が自分を可哀相だとは思っていない。散々嫌な思いもしてきただろうが、ライラの口から出るのは、恨み言ではなく感謝の言葉ばかりだ。

 それはスヴェンに対しても同じだった。突き放しても、冷たくしても、ライラは笑顔を向けてくる。寄り添おうとしてくる。

 だからスヴェンとしては戸惑うしかない。嫌っているわけでもない。ただ受け入れるのが面倒なだけだ。

 なにもかも切り捨てて割り切ってきた自分にとって、今更誰かと歩み寄るのは億劫でしかない。もうあんな思いをするのは御免だ。それなのに――。

 スヴェンの発言を受け、ライラはわけがわからないままに回していた腕をほどいた。顔を上げたスヴェンと目が合う。

 部屋が暗くても、お互いの表情はしっかりと認識できるほどに近い。先に唇を動かしたのはスヴェンの方だった。