冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

けれど、あの戦争でたくさんの者を傷つけ、自分たちも傷つき、そこまでしてなにを守ったのか。

 誰のために戦った? 本当に国のためだったのか。わからない。幼馴染みの死はなんだった?

 国王の、上に立つ人間の一言で多くの人間が動き、命が消える。ひとくくりにされる死者の数。でもその一人ひとりに人生があり、大切なものがあった。

『俺たちは物なんかじゃない!』

 あのとき、誰に対してぶつけることもできなかった感情が今でも心の奥底でずっと燻っている。

「……どうして今、私に話してくれたの?」

「さぁ、なんでだろうな」

 ライラの静かな問いかけにスヴェンは適当に答えた。スヴェン自身も明確な理由などわからない。

 ライラに対し、彼女を物のように扱ったことで、蓋をしていた感情が自戒のように痛みだしたからか。それとも――。

 しばらく視線を落としたままでいると、正面に気配を感じスヴェンは顔を上げようとした。しかし、それは予想外の行動で阻まれる。

 いつの間にかベッドから下りたライラがスヴェンの前に立ち、彼の頭を包み込むようにして抱きしめてきた。

「ごめん、ね。なんて言っていいのかわからない。でもスヴェンが泣きそうだから」

 ライラの声は震えていたが、回された腕は力強く温かかった。スヴェンは抵抗することなくため息混じりに呟いた。