冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

まさか誰かに吐き出す日が来るとは思いもしなかった。そして一度栓を抜けばその勢いは止まらない。

「クラウスを含め俺とルディガー、そしてセドリックは幼馴染みだった。セドリックの父親が前アードラーを務めていたのもあって、俺たちは彼に剣を習った。誰よりも強くなって、ゆくゆくは王となるクラウスを、この国を守るんだと意気込んでいた」

 スヴェンの表情はライラからは見えない。けれど淡々と彼の口から語られる話をライラは微動だにすることなく聞き入った。

 スヴェンたちの剣の腕は確かなもので、指導者がよかったからか、筋がよかったからか、早々と将来を期待され、夜警団への入団が許された。

 アルント王国としては、アルノー夜警団は使うよりも持つ方に重きを置いていた。騎士団としての存在自体が国内の秩序を保つことに繋がり、また他国への戒めとして機能し、無駄な争いを避けていた。

 しかし前国王は夜警団の基本理念『必要最低限の介入を』を捻じ曲げ、近隣諸国への見せしめと夜警団に所属する若者たちの国や王に対する忠誠心を試すつもりで、挑発するかのように他国へ騎士団として派遣させた。

「国王は必然的にアルノー夜警団の総長も務めることになる。前国王は夜警団の使い方を間違えたんだ」

 スヴェンたちが十八になる頃だった。緊張状態にあった南国境沿いに隣接するローハイト国に奇襲のように攻め入るよう国王が指示を出したのは。