「この子、スヴェンの馬?」
「そうだ。年だが、機敏で頭もいい」
主人の褒め言葉がわかるのか、馬はわずかに誇らしげな表情を見せた。ライラはゆっくりとそばに寄る。
「名前は?」
「名前はない」
つけたらいいのに、と思いながらライラはスヴェンの馬に向き合う。
「この前は、乗せてくれてありがとう」
静かにお礼を告げ、スヴェンに倣って手を伸ばしてみる。嫌がられたら、という思いは杞憂に終わり、馬は素直にライラの接触を受け入れた。
近くで見ると目が大きく優しい。柔らかいとは言いづらい感触だが、ライラは幾度となく鼻梁を撫でてやる。
「バルシュハイト元帥!」
そこでスヴェンを呼び止める声が厩舎に響く。スヴェンの元にあどけなさが残る青年が近づいてきた。彼は夜警団の団服は着ていない。ライラに目もくれることなくスヴェンに説明を始める。
「例の新しく来た鹿毛の馬ですが、どうも扱いが難しく。戦馬としては申し分ない体格と速さはありそうですが、人を乗せるのを拒否しているんです」
「俺も少し確認したが、なかなか難しそうだったな。どんなに素質があっても人さえ乗せられないなら、ここでは役立たずだ」
切り捨てるようなスヴェンの言い分に青年は悔しさを顔に滲ませた。
「そうだ。年だが、機敏で頭もいい」
主人の褒め言葉がわかるのか、馬はわずかに誇らしげな表情を見せた。ライラはゆっくりとそばに寄る。
「名前は?」
「名前はない」
つけたらいいのに、と思いながらライラはスヴェンの馬に向き合う。
「この前は、乗せてくれてありがとう」
静かにお礼を告げ、スヴェンに倣って手を伸ばしてみる。嫌がられたら、という思いは杞憂に終わり、馬は素直にライラの接触を受け入れた。
近くで見ると目が大きく優しい。柔らかいとは言いづらい感触だが、ライラは幾度となく鼻梁を撫でてやる。
「バルシュハイト元帥!」
そこでスヴェンを呼び止める声が厩舎に響く。スヴェンの元にあどけなさが残る青年が近づいてきた。彼は夜警団の団服は着ていない。ライラに目もくれることなくスヴェンに説明を始める。
「例の新しく来た鹿毛の馬ですが、どうも扱いが難しく。戦馬としては申し分ない体格と速さはありそうですが、人を乗せるのを拒否しているんです」
「俺も少し確認したが、なかなか難しそうだったな。どんなに素質があっても人さえ乗せられないなら、ここでは役立たずだ」
切り捨てるようなスヴェンの言い分に青年は悔しさを顔に滲ませた。


