本当は少しでもいいから知りたい。命令で仕方なくとはいえ自分と結婚した彼のことを。

「……どうしてスヴェンはあまり眠れないの?体質?……それもともなにかあったの?」

 おそるおそる尋ねてみる。スヴェンは軽く瞳を閉じ、唇を動かした。

「答えたくない」

 ライラは一瞬、自分の耳を疑う。改めて脳で伝えられた言葉を処理し、つい声をあげた。

「え、ちょっと待って。聞けばいいって言っておいて、その回答はひどくない?」

「なぜ? 答えるかどうかは俺が決めると言ったはずだ」

「そうだけど……」

 勢いを失ったライラはソファの背もたれに手をかけたまま項垂れる。まったく、なんなのか。緊張感を持って聞いた分、脱力感も大きい。

「わかっただろ、俺は自分の意思ははっきりと口にする。だから、あれこれ考えて気を回すのは無駄骨だ。結婚したんだからそれくらいはわかっておけ」

 降ってきた言葉はいつもの彼らしく淡々としている。けれどそこにスヴェンの優しさが見えた気がして、ライラは苦しげに顔を歪めた。

「ごめん、なさい。フューリエンなんて言われながら、私には特別な力も、周りが思うような大きな価値があるわけでもない。私自身にはなにもないのに、アードラーであるスヴェンには結婚という形で迷惑をかけて……」

 国王陛下の命令という形で、彼は自分が思う以上にわりきって受け入れているのかもしれない。だからといって、なにも後ろめたさを感ないほどライラは図太くもなかった。

 気遣われた分、余計に申し訳ない気持ちが増幅する。