冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

ライラは彼に対し、困惑気味に微笑んだ。

「だって聞かれたくないことってみんな色々あるでしょ?」

 それはライラ自身にも言える話だった。幼い頃から左右異なる色の瞳について散々聞かれてきた。

 どうしてそんな目になったのか、なにかの病気なのか、見え方はどうなのか。

 無邪気な質問は時に刃のように鋭く刺さる。とはいえ傷ついた顔を見せるわけにもいかない。だから結果的に隠すという選択肢をとった。

「簡単に触れたりしてはいけない誰かの中に踏み込むのって、すごく覚悟がいると思うの。そうしないと分かり合うこともできないって理解もしている。でも、聞いて傷つけるのは嫌だから私は聞かない。……それに私たち、本物の夫婦でもないし」

 最後はわざとらしくおどけて言ってみせた。

 するとスヴェンは壁から背を離し、ゆっくりとライラの元まで歩み寄って来た。怒っているような、不機嫌なような。彼の表情から感情を読み解くのは、ライラには相変わらずできない。

 ソファの背もたれ越しにふたりの距離は縮まった。

「なんだそれ。形式だけとはいえ、書類は受理されて俺たちは結婚しているんだ。本物も偽物もないだろ。気になるなら聞けばいい。答えるかどうかは俺が決める」

 目を見張ったままライラは体勢を変えることもなくスヴェンを見つめる。スヴェンも見下ろしながらライラから目を逸らしはしなかった。

 ライラは心の中で問いかける。自分はどうしたいのか。夫婦といっても形だけでなにもかも割り切った結婚生活、それに期間も限られている。

 冷静に現状を分析しながら、一方で自然と溢れ出る気持ちもあった。