「連れて来たぞ」

 スヴェンに続いてライラも中に入る。机に向かって書類に目を通しながら、正面に立つセシリアと会話をしていたルディガーが視線を寄越した。

 セシリアの目も同じように向けられる。ふたりとも団服をきっちりと着こなしていて職務中だった。

「昨日はお世話になりました。改めまして、ライラ・ルーナと申します」

 先に挨拶したライラに、ルディガーは立ち上がって笑った。

「昨日は突然驚いただろ。調子はどうかな? よく眠れたかい?」

「はい」

 ライラの元まで歩み寄ると、ルディガーは胸に手を当て軽く頭を下げた。

「名乗るのが遅くなって悪かったね。俺はルディガー・エルンスト。スヴェンと同じアードラーを務めているんだ。こちらは副官のセシリア」

 ルディガーの言葉と目線を受け、上官から一歩下がった位置でセシリアが静かに口を開いた。

「セシリア・トロイと申します。アルノー夜警団に所属し、エルンスト元帥の副官をしています。事情は少し聞きました、いろいろと大変でしたね」

 抑揚はあまりないが労わる口調のセシリアに、ルディガーはさっと近づくとわざとらしく彼女の肩に手を乗せた。

「セシリアは頭も切れるし気も利く。同じ女性だし、なにかあれば彼女に相談すればいい。もちろん俺たちでも大歓迎だ」

「ありがとうございます、よろしくお願いします」

 事情を知っているルディガーとセシリアの存在にライラは少しだけ気持ちを浮上させる。しかしスヴェンから釘をさすように先を続けられた。