アルント王国の歴史はエアトタイル大陸の出現と共に語り継がれる。

 今では領土を四方に広げ大陸すべてを統治する勢いだが、伝説によると最初は国と呼べるほど大きなものではなかったらしい。

 まだアルント王国と名乗る以前にこの土地を統治していた存在から褒美として領土を与えられた一貴族が初代王となり、国は始まったとされている。

 その血を継ぐ者が歴代の王となり、王政は揺るぎなく続いていた。不思議なことに治世が危ぶまれることがあっても、何世代かにひとりは王として生まれるべく資質を兼ね備えた者が現れるのだ。

 まさに今の国王もそうだった。現国王クラウス・エーデル・ゲオルク・アルントは齢二十六にして聡明さと人々を魅了する美貌を併せ持ち、いかんなく手堅い政治手腕を発揮している。

 そして国王直属の管轄にある『アルノー夜警団』は王や城はもちろん王都アルノーの警護も承り、人々の安穏な暮らしを維持するため官憲組織の役割も担う。

 市民からの訴えを受け、国王からの命で時には騎士団として近隣諸国へ赴くこともある。その際に彼らが共通して掲げる基本理念は『必要最低限の介入を』ということだ。

 不必要に権力や武力を誇示することはしない。だから団員に対し尊敬の目を向ける者もいれば、国王のお飾りだと揶揄し蔑む者もいる。

 実際、彼らの活躍はほとんど表に出ることはない。なぜなら極力、秘密裏に問題を片付けることが多いからだ。

 まさに今もそうだった。