『ライラ、あなたの瞳の色はとても大事な印なの』

『しるし?』

 ライラと目を合わせるため腰を屈め、伯母は微笑んだ。ライラと同じ栗色の髪、しかしライラとは違い伯母の髪はふわふわでその髪に触れるのがライラは好きだった。

『そう。伯母さんもそうだったから、あなたの気持ちは痛いほどわかるわ。でもずっとじゃない』

『ずっとじゃない? いつになったら治るの?』

 伯母の言葉に声を弾ませ、希望の炎が心に灯る。しかし叔母は曖昧な表情になった。

『そうね……あなたがもっと大きくなって素敵な人に出会って恋をする頃かしら?』

『こい?』

 聞き返すライラに伯母は困ったように笑う。そしてライラの額に軽く口づけた。

『ライラの瞳はお月さまみたいに綺麗よ。どうかあなたに満つる月のご加護があることを』

 このやりとりを何度交わしたのか。もっと聞きたいことがあった。知りたいことがあったのに。直接、伯母の口から聞けたのはこれだけだ。

 ライラが自分の瞳について詳しく知ったのは、両親を亡くし孤児院に入ってからだった。不確かな記憶を辿れば自分がグナーデンハオスにやって来たのは、六、七歳の頃。

 そして十二になって迎えた初めての春、シスターからある手紙を受け取った。差出人は伯母で『十二歳になったライラへ』と宛名に書かれていた。

 この手紙はどこから来たのか。シスターはライラが孤児院に預けられた当初、渡された荷物の中に入っていたと説明した。