「……でも、お前自身になら何度でも誓ってやる」

 次の瞬間、スヴェンはライラとの距離を詰め、まっすぐに彼女を見つめた。

「ライラが幸せなら俺はそれでいいんだ。泣きたくなったら泣けばいい。最後には笑って、これからも変わらずずっとそばにいるなら、愛でも約束でもなんでも捧げてやる」

 そこでスヴェンはライラの額に自分のを重ね、至近距離ではっきりと伝えた。

「一生かけて守っていく。だから絶対に離れるなよ」

 瞬きもできずに固まっていたライラだが、穏やかな緑色の瞳が大きく揺れると、みるみるうちに目元に涙が溜まっていった。

 ライラはスヴェンの言葉を噛みしめて、頷きながら答える。

「うん……うん。私も誓うから。陛下にでも神様にでもなく、スヴェン自身に。ずっとそばにいさせてね」

 その言葉を封じ込めるように、ゆっくりとスヴェンが唇が重ねた。立会人も証人も誰もいない。けれど皆の前で行う宣誓よりもよっぽど確かで揺るぎない。

 ずっと他人と距離を置いて生きてきたふたりが、自分を変えてしまう相手に出会った。そこからすべては始まった。

 スヴェンはライラと初めて会ったときを思い出す。片眼異色で黄金の瞳。なにもかもが目に焼きついているが、惹かれたのはそこにじゃない。

 ライラがこんなにもかけがえのない存在になったのは、彼女が彼女自身だったからだ。

 急がなくては、と思いつつもう少しだけライラとここでいたい気もする。青い空から黄金色ではなく白く満ちていく月がふたりを静かに見守っていた。

Fin.

(瞼に口づけ……憧憬、慈しみ、深い愛情)