冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「部屋に案内する、ついて来い」

「は、はい」

 ライラは返事をすると王に深く頭を下げて体勢を整え直し、言われるがままスヴェンの後を追った。部屋には王とルディガーが残る。

「スヴェンは出来る男だが、なかなか手強いだろうな」

「お前な、彼女が自分の探していた相手じゃなかったからって俺たちで遊ぶなよ」

 王のひとり言に、ここに来てようやく乳兄弟としてルディガーが接した。尋ねた声には不信感がありありと滲んでいる。それをかわすように王は口角を上げる。

「ひどい言われようだな。ライラの身を案じてこそだろ。お前もしっかりフォローしてやれ」

「言われなくてもそのつもりだ。にしても彼女、あいつと上手くやれるだろうか」

 ルディガーが心配しているのはもちろんスヴェンとライラのことだった。どう贔屓目に見ても気が合いそうには思えない。

 そもそもスヴェンが女性に優しくするというのがルディガーには想像できなかった。

「それこそ見物(みもの)だな。暇つぶしにはちょうどいい」

 あっけらかんとした王の切り返しにルディガーは思わず肩を落とす。付け足すように王は続けた。

「ルディガー、お前ももう休め。そしてセシリアにもこの件は伝えておけ。同性だからなにかと親身になってやるといい。ただし夜警団の中では情報はそこまでだ」

「了解」

 やれやれといった感じでルディガーは首を振る。王はさらにルディガーに投げかけた。

「スヴェンが自ら名乗り出たのは、あながち俺でも彼女のためでもなく、お前のためだったんじゃないか?」

 その指摘は聞かなかったことにして、ルディガーは改めて胸に手をやり頭を下げ、型通りの挨拶をしてから謁見の間を後にした。