ドレスを脱ぎ、湯浴みを済ませて言われるがままにスヴェンの部屋で待つライラだったが、そわそわと落ち着かず、ずっと部屋の中を行ったり来たりしていた。

 日付が変わりそうな時間だが、不思議と眠たくはならない。それよりも先ほどから鳴りやまぬ心臓とずっと格闘していた。

 そのとき前触れもなくドアが開かれ、びくりと肩を震わせる。

「なにしてるんだ?」

 部屋の真ん中で立ちすくんでいるライラに声がかかった。

「おかえり、なさい」

 団服を脱ぎ、ラフな格好をしたスヴェンが現れライラは彼に向き直った。

 ライラはゆったりとした肩口が開き気味の長袖の夜着を身にまとっている。色は白で袖口と裾が広がりを見せ、シンプルだが可愛らしい。

 選んだのはもちろんマーシャだ。

「迎冬会は大丈夫だった?」

「問題ない」

 端的に返され言葉を迷っているとスヴェンが呆れた面持ちになる。

「お前な、今更そんなに意識してどうする?」

「だ、だって……」

 あっさりと言い当てられ、ライラは狼狽える。ここでスヴェンと夜を過ごすのはもちろん初めてではない。なんなら昨日だって同じベッドで眠った。

 けれど、今の自分はフューリエンではなく片眼異色も消えていると思うと、大義名分が消えた気がしてどうも落ち着かない。

「いいからこっちに来い」

 ベッドに腰掛けたスヴェンがライラを呼ぶ。スヴェンの真正面までたどたどしく歩み寄ると、スヴェンがライラに手を伸ばし、自分の方に引き寄せた。

 おかげでライラはベッド膝立ちする形で、スヴェンを見下ろす。腰に回された腕の感触に心臓が早鐘を打ち始めた。