冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

スヴェンの部屋の前ではマーシャが待機していて、ふたりに気づくと安堵の笑みを浮かべた。スヴェンが問いかける前にマーシャが答える。

「陛下に申し付けられまして。おふたりで一緒に戻って来られるのをお待ちしていましたよ。よかったですね、ライラさま。……いえ、よかったのはスヴェンさまでしょうか?」

 嬉しそうなマーシャにライラは遠慮がちに声をかけた。

「マーシャ、でも私はもうフューリエンじゃなくて……」

「ええ。ですから、これからはスヴェンさまの奥様としてお仕えしますよ。かまいませんね?」

 最後にマーシャが尋ねたのはもちろんスヴェンにだ。スヴェンは目だけで応える。

「とりあえず湯浴みさせてやってくれ。ずいぶんと冷えてる」

「承知しました。ちなみにいかがでしたか? ライラさまのドレス。素敵でしたでしょう。私が見繕わせていただいたんです」

 マーシャに話題を振られ、スヴェンは改めてライラを見た。彼からの視線を受け、ライラは気恥ずかしさで目を伏せる。

「いいんじゃないか、よく似合ってる」

 からかい半分だったマーシャは驚きで目をぱちくりとさせた。意外なのはライラも同じだ。スヴェンは気にせず踵を返そうとする。

「俺は戻る……ライラ」

 呼びかけられ、ライラはスヴェンと目を合わせた。

「極力早く戻ってくる。どこにも行くなよ」

「うん。スヴェンが帰ってくるのをちゃんと待ってるね」

 ライラの答えにスヴェンは満足したように口角を上げた。その笑みはいつになく優しくて、ライラの胸を十分に高鳴らせた。