冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「こんなふうに俺を変えたのはお前なんだ。お前は俺のものなんだろ。なに勝手にいなくなろうとしてるんだ?」

「で、でも、結婚は陛下の命令で、私たちはもう……」

 とっさに言い返したが、ライラは続きを言いよどむ。ほんの刹那の沈黙の後、スヴェンが続けた。

「そうだな。けれど俺はあの離縁状にはサインしていないし、するつもりもない。だからお前はこれからも俺のものなんだ。逃がしたりしない」

 スヴェンの発言に、ライラは信じられない面持ちで彼をまっすぐに見つめた。スヴェンはライラとの距離を詰めて彼女を見据える。

「好きになってくれる人間をわざわざ探しに行かなくてもいいだろ。俺じゃ駄目なのか?」

 ぶっきらぼうな言い方だが、伝わってくる体温も彼の言葉も胸を熱くする。ライラは静かにかぶりを振った。

「駄目じゃない。他の人じゃ意味ない。私、ずっとスヴェンの特別になりたかったの」

 意識せずとも涙がこぼれ落ち、ライラの頬も、触れていたスヴェンの手も濡らす。スヴェンはライラをそっと抱き寄せ、腕の中に収めた。

「私、フューリエンじゃないけど……そばにいてもいい?」

「俺はもうとっくにお前を手放せないんだ。だから、俺に幸せになってほしいなら遠くで祈ってないで、そばにいろ」

 祈るのも願うのもいらない。いつも通りそばにいて笑っていればいい。それだけで穏やかな気持ちになれる存在はライラが初めてだ。

 だから認めるのに随分と時間がかかってしまった。遠回りもした。