冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「俺がその話を受けましょう」

 ライラの答えを待たずして、スヴェンが静かに名乗りでる。彼以外のすべての人間の視線が集中した。王はわずかに目を丸くさせ、口元を緩める。

「珍しいな、スヴェン。お前ならこちらが指名しても、素直に首を縦に振るとは思えなかったが」

「陛下の命令なら従うまでです。これはそういう案件なのでしょう?」

 強い眼光が下から王を捉える。クラウスはゆっくりと頷いた。

「ああそうだ。お前らが渋ったとしても命令するまでだ」

 スヴェンは納得したように息を吐き、視線を王から落とす。その目は隣に向けられた。

「ルディガー、かまわないな」

「あ、ああ」

 一応、もう一人の候補に確認を取る。ルディガーもスヴェンの行動が意外だったのか、どこか生返事だった。ルディガーに代わり王が揶揄する。

「どうした、やけに積極的じゃないか」

「彼女を先に見つけたのは俺ですから」

 感情を声に乗せることなく、スヴェンはきっぱりと言い捨てた。王はまだ混乱しているライラに声をかける。

「この男はスヴェン・バルシュハイト。もう一人の男、ルディガーと並びアルノー夜警団のアードラーだ。……スヴェン」

 名を呼び、王の視線は男に移った。

「とりあえず時間も時間だ。ひとまず今日は彼女を客室へ案内してやれ。護衛は客人用にと別の人間を待機させておく。彼女の世話はマーシャにでも話しておこう。お前も今日はもう休め」

 スヴェンは再度胸に腕を添え国王に敬意を払う姿勢を取り、ゆっくりと立ち上がった。