冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

慣れないドレスでダンスどころか歩くのさえぎこちないライラは、とてもではないがスヴェンの隣には立てない。そばにも行けない。

 もしも本当のフューリエンだったら、スヴェンを幸せにできたのかもしれない。これからもそばにいられたのかもしれない。

 馬鹿な考えが過ぎって、空しさだけが増していく。祈って願うことしか自分にはできない。それさえも許されないなんて。

 視界が滲みそうになるのをぐっと我慢していると、不意に頬に温もりを感じた。驚いて顔を上げれば、スヴェンがライラの頬に手を添え、切なげな眼差しを向けている。

「なにもない? 違うだろ。人間に心を開かなかった馬を使えるようにした。荒れ放題だった薬草園を少しずつ手入れして、また花を咲かせた。シュラーフを使って飲めるようなお茶を作った。それは全部、お前がフューリエンだとか関係ない。ライラ自身が成し遂げたことだろ」

 視線を合わせ、ひとつひとつを、まるで子どもに言い聞かせる口調でスヴェンは語る。そしてスヴェンは言葉を区切り、ライラの頬を優しく撫でた。

「それに、お前のおかげで俺は眠れるようになった。そばに誰かを置くのをずっと拒否していたのに、俺はお前がいないと眠れないんだ。どうしてくれる?」

 思わぬ告白にライラは大きく目を見開いた。スヴェンは少しだけ表情を緩める。