冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「バルシュハイト元帥?」

 声をかけていた令嬢をも無視して、足早になる。

 ルディガーはスヴェンの異変に気づくも、状況が把握できない。なにかあったなら自分に声をかけるなり、近くの団員に言伝するはずだ。

 高い位置でいる国王に目配せすれば、クラウスはルディガーに微笑んでみせた。なにもかも見透かす余裕のある表情だ。

 おかげでルディガーはとくに動きもせず呆然とスヴェンの後ろ姿を見つめた。

 黄色いドレスを身に纏った女性がいくつかある大広間の出入口から外に出るのを確認し、スヴェンは近くの扉から外に出た。

 なんとなく彼女がどこに向かっているのか見当がつく。

 外に出れば中の喧騒が夢のようだった。まったくの別世界、暗くて冷たい夜が広がっている。

 そんな中、スヴェンは廊下を走り、静かに中庭に足を踏み入れた。外気は息を白く染め、他の人間の姿はない。ただ、明るい月だけが暗闇を照らしている。

 そしてスヴェンの予想通り薬草園の前に彼女の姿はあった。こちらに背を向け、薬草園をじっと見つめている。

 スヴェンは気配を消さずに大股で彼女に近づいた。 すると彼女はすぐにスヴェンの存在に気づき、後ろを振り返って大きく目を見開く。

 仮面の奥の瞳が揺れ、慌ててその場を去ろうとした。しかしスヴェンが素早く彼女の肩を掴み、強引にこちらを向かせる。

「ライラっ」

 疑問系ではなく確信をもって名前を呼べば、相手は驚きで瞬きさえできずに硬直した。スヴェンはすぐさま彼女の仮面に手をかける。