冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

『フューリエンとか瞳の色とか関係なく、私自身を見て好きになってくれる人を探すの。私ね、誰かの特別になりたい!』

 戯れに触れ合って、曖昧な言葉で確かめ合う。ルディガーの忠告もあったのに、心地よさにかまけて結局はなにもはっきりさせていない。だから失った。

『スヴェン、ライラはお前にとくに感謝していた。お前の幸せを願っていると』

『ライラは無鉄砲なところもありますが、いつも人のために一生懸命なんです』

『わかってる』

 実際はなにもわかっていなかった。ライラが自身のために、誰かになにかを強く望むことがない人間なのは、とっくに知っていたはずなのに。

 苛立ちを押さえ、スヴェンは唇を強く噛みしめた。彼女は今、どこにいるのか、なにを思っているのか。

 鬱陶しくも顔を上げて会場を見渡す。そこでふと誰かと視線が交わった。

 珍しく相手を確認すれば、来客者の群れの中から一歩下がった位置で、他の令嬢たちに混じって仮面をつけている女性がじっとこちらを見ている。

 注目されるのも、見られるのも珍しくはない。しかし彼女以外のすべてが一瞬にして色を失う。

 淡い黄色にドレスにはフリルや花があしらわれ、髪はサイドから編み込まれてまとめられていた。シンプルな仮面の左側にはドレスと同じ色の黄色い花が添えられている。

 スヴェンは思わず息を呑む。先に視線を逸らしたのは相手で、素早く群衆に溶けるためにその場を去る。

 けれどスヴェンは彼女を目で追い、ゆるやかに足を進めだした。