着飾った令嬢たち、笑顔を貼りつけ腹の探り合いをする貴族、王家に媚びを売ろうと必死な者。なにもかもが滑稽に思えて、スヴェンは王に近い会場の端で全体を眺めていた。
「バルシュハイト元帥」
不意に声をかけられ、視線を向ければターコイズブルーのドレスを身に纏った若い女性が笑みをたたえていた。
細かい銀細工の施された深緑色の仮面をつけているので顔ははっきりしない。しかし伝わってくる雰囲気や立ち振る舞いからこういう場に慣れているのがわかる。
「一曲、踊っていただけません?」
「遠慮する」
すかさず断りを入れたが、彼女は怯まない。
「こんな美人がお誘いしているのに? それとも素顔を見せれば踊っていただける?」
たいした自信だな、と思いながら口にするのも面倒でスヴェンは視線を逸らした。
遠くでは同じように令嬢から誘いを受けているルディガーが目に入ったが、にこやかにかわしている。
「ダンスはお嫌いかしら?」
続けられた彼女の問いかけに、ふとスヴェンの記憶が呼び起された。
『スヴェンも……私のこと嫌いじゃない?』
『スヴェンは……嫌じゃない?』
そういえばライラはいつも「好き」だとはけっして聞いてこなかった。否定してやれば嬉しそうに笑う。
嫌われていなければ、嫌でなければ、それでいいと満足していた。でも、本当にそうなのか。彼女はなにを望んでいたのか。
「バルシュハイト元帥」
不意に声をかけられ、視線を向ければターコイズブルーのドレスを身に纏った若い女性が笑みをたたえていた。
細かい銀細工の施された深緑色の仮面をつけているので顔ははっきりしない。しかし伝わってくる雰囲気や立ち振る舞いからこういう場に慣れているのがわかる。
「一曲、踊っていただけません?」
「遠慮する」
すかさず断りを入れたが、彼女は怯まない。
「こんな美人がお誘いしているのに? それとも素顔を見せれば踊っていただける?」
たいした自信だな、と思いながら口にするのも面倒でスヴェンは視線を逸らした。
遠くでは同じように令嬢から誘いを受けているルディガーが目に入ったが、にこやかにかわしている。
「ダンスはお嫌いかしら?」
続けられた彼女の問いかけに、ふとスヴェンの記憶が呼び起された。
『スヴェンも……私のこと嫌いじゃない?』
『スヴェンは……嫌じゃない?』
そういえばライラはいつも「好き」だとはけっして聞いてこなかった。否定してやれば嬉しそうに笑う。
嫌われていなければ、嫌でなければ、それでいいと満足していた。でも、本当にそうなのか。彼女はなにを望んでいたのか。


