ふとライラが目を覚ますと、辺りは耳鳴りがするほど静かだった。薄明りの中、徐々に焦点を定めていく。今は真夜中だった。

 続けて自分を包む温もりに気づいて、ライラは目だけを動かす。回された腕は心地いい重たさをもたらしていた。

 スヴェンの寝顔、初めて見た。

 そっと視界に捉えたのはライラを抱きしめるようにして眠っているスヴェンの姿だった。

 鋭い眼光は瞼に隠れ、伏せられた長い睫毛が影を作っている。すっと伸びた鼻筋に、薄い唇。十分に整っている顔立ちだ。

 寝息は静かで、熟睡しているのが伝わってきた。それでも敏い彼なら、些細なことでも起きてしまう。ライラは息さえ止めそうな勢いで固まった。

 あれからスヴェンはずっとライラのそばにいた。本当は迎冬会に向けて、しなくてはならない仕事もあるだろうに、気にしなくてもいいと一蹴し、ライラを優先するのを譲らなかった。

 ライラとしては仕事もそうだが、スヴェンの体調も心配になる。けれど眠れているならよかった。ホッと胸を撫で下ろす。

 無造作な黒髪に触れたくなるのをぐっと我慢し、ライラはしばらくスヴェンの寝顔を堪能した。こんな貴重な機会、きっともう二度とない。 

 私、スヴェンに自分の気持ちを伝えてもいいのかな?

 心の中で問いかけたので、返事は自分でするしかない。考えても答えは出せない。

 とにかく迎冬会が終わってからにしよう。ただでさえ、スヴェンの仕事を遅らせちゃったんだから。

 結論を先延ばしにし、今は与えられる温もりに身を委ねる。おそらく自分が目覚めたときには彼の姿はない。それでも、こうして抱きしめてもらえているのがわかってライラの気持ちは温かくなる。

 ありがとう、スヴェン。

 やはり声には出せなかったが、ライラは複雑な思いで微笑み、再び目を閉じた。