ゆるやかに顔を近づけられ、ぎこちなく目を閉じると予想通り、唇に温もりを感じた。

 触れるだけの穏やかなキスが幾度となく繰り返され、身を委ねていたライラだが、ふと顎を引いて口づけを中断させた。

 驚いてじっと見つめてくるスヴェンから逃げるようにライラはうつむき気味になる。

「こ、こういうのはやっぱり好き合ってる同士でした方が……」

「嫌か?」

 消え入りそうな声で主張すると、間髪を入れずにスヴェンが珍しく不安げに尋ねてくる。ライラの心臓は早鐘を打ちだしていた。それを必死で抑え込む。

「……スヴェンは嫌じゃなかったら他の人ともするの?」

 ライラの切り返しにスヴェンは目を見張る。ライラの頭にはジュディスの姿が過ぎり、思わず唇を噛みしめた。

「しない」

 前触れなく降ってきた言葉にライラは、顔を上げる。すると、すかさず唇が重ねられた。

「お前こそ、嫌なら本気で抵抗しろ」

 吐息を感じるほどの距離でぶっきらぼうに告げられ、ライラは顔を歪める。胸が詰まって声がなかなか出せない。 

「っ、無理だよ」

 上擦って発せられたライラの言葉にスヴェンは眉を寄せる。しかし、続けられた内容には虚を衝かれた。