あたふたとライラはユルゲンと交わしたやりとりを手短にスヴェンに説明する。ユルゲンがスヴェンに抱いていた劣等感混じりの思いも含めて。

「だから、あまり彼を責めないでほしいの。私も無事だったし」

「お前な、自分の立場をわかっているのか? なんであいつを庇うんだ」

 叱責めいたスヴェンの言い分にライラは小さく反論した。

「庇っているわけじゃないけど、でも……あの人の気持ちも少しわかるから」

 周りと比べて、勝手に卑屈になって、自分の価値が見えなくて苦しくなる。ライラには覚えのある感情だ。

 ましてやスヴェンみたいな人間がそばにいて比較され続けていたら、ユルゲンにも少しは同情の余地がある。もちろん彼の行動は許されるべきものではないが。

 スヴェンは嫌々ながらも口を開いた。

「……あいつは、昔から誰とでもすぐに打ち解けられた。今回の尖塔の鍵も清掃で持っていた者から上手く信用を得て借りたらしい。そんな性格で花を育てるのも上手いから、貴族たちの間では御用達のものも多く、それで財も築いている。どれも俺には真似できない」

「それ、本人にも伝えてあげてね」

 ライラがスヴェンに詰め寄って告げると、スヴェンの眉間の皺が深くなった。