「それにしても、よく髪を切ろうと思いついたな」

 感心というより申し訳なさげな声色だ。ライラはぐっと喉の奥に力を入れた。

「スヴェンのおかげ……なの」

「俺?」

「うん」

 顔を上げないままライラは小さく頷く。どうスヴェンのおかげなのかは上手く説明できない。ただ、ずっとライラの胸には彼の言葉があった。

 ライラはゆるゆると顔を上げる。思ったよりもスヴェンの顔が近くにあり驚くのと同時に安心できた。だから本音が漏れる。

「スヴェンにどうしても会いたくて……スヴェンなら見つけてくれる気がしたから」

 頼りない声と共に、止まっていた涙が再び零れ落ちた。スヴェンはライラの頬に触れ、そっと親指で涙を拭ってやる。

 左右で異なる色の瞳を見られても、ライラは顔を背けなかった。そのままスヴェンから瞼に唇を寄せられ、目を閉じて静かに受け入れる。

 淡い温もりは涙を止める魔法だった。目を開けて瞬きすると、スヴェンは渋い顔をしていた。

「そういえば、あいつになにを言われたんだ? 結婚とか言ってたのは……」

「あ、あれはね。スヴェンと別れて結婚して欲しいって言われて」

 思わぬ発言にスヴェンはあからさまに不快感を顔を露わにした。おかげでライラは慌ててフォローする。

「でも彼が私を好きとかそういうのじゃないの。私がフューリエンで、スヴェンと結婚しているからって理由で……」