冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「フューリエンの末裔の持つ瞳の色は生まれながらではあるが、永遠ではない。そうだな、ライラ?」

 王の投げかけを受け、ライラは静かに頭を下げる。

「はい。血を引くといっても金の瞳を受け継ぐのは女児にだけ。もちろんすべての者ではありません。さらに片眼の金色の輝きは十八の年が来れば、本来の色に戻るのです」

 フューリエンの話は知っていたがスヴェンやルディガーにとっては初めて知る事実だった。だから王はライラに年齢を聞いたのだと合点がいく。

「伯母もだったと聞いています。私は今、十七。私が生まれたのはその年初めて雪が降った日の朝だったそうです。なので私ももうすぐ十八となり、この瞳の金色も例にもれず消えるかと」

「そう長くないなら尚更、ここに身を置いておいたらどうだ?」

 王の提案にライラはしばし思考を巡らせる。孤児院に迷惑をかけるわけにはいかない。とはいえ、ほかに行くところもすぐには浮かばない。

 しばらくして決意を固め、ぎゅっと唇を強く噛みしめた。

「陛下の慈悲深さ、痛み入ります。感謝してもしきれません。ならばご厚意に甘え、この瞳の色が消えるまでお世話になってもかまいませんか?」

「もちろんだ。余計な気を回さず、好きに過ごせばいい。……ただし、ひとつ条件がある」

 そこで言葉を区切ると、王はライラの両サイドで控えているアードラーのふたりを見遣った。スヴェンとルディガーは王の視線の意味がわからず互いに視線を交わらせる。

 続けて紡がれた王の言葉に、今日一番の動揺がこの場に走った。

「城にいる間だけでかまわない。ここにいるこどちらかの男と結婚してもらおう」