冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「いい加減、疲れたでしょう。そろそろ終わりにしましょう」

 ユルゲンが一歩踏み出し、ライラとの距離をさらに縮めたときだった。突然ライラは、背をつけていた壁から前へ飛び出す。

 ユルゲンがドアから離れるタイミングをずっと見計らっていて、このときを待っていたのだ。

 部屋の中に入ってきた際、彼は鍵をかける素振りを見せなかった。不意を突いてユルゲンの横をすり抜け、ドアに手を伸ばす。

 ライラの予想通り、ドアは外からしか鍵をかけれず、木製の古びたドアは簡単に動いた。勢いよく押して、向こう側の空気が隙間から流れ込んだ瞬間、ライラは肩を掴まれ、力強く後ろに引かれた。

 思わず体勢を崩し、冷たい床に投げ飛ばされる。力の限りの衝撃を受け、痛みに顔をしかめる間もなく、ユルゲンが上に覆いかぶさってきた。

 ライラの細い腕を掴み、右手のナイフを取り上げようとする。

「離して!」

「まったく。手荒な真似はしたくないんですが」

 いくらユルゲンが細身とはいえ、男女の体格と力の差は歴然だった。ライラは必死で抵抗するも、ほとんど意味をなさない。

 ライラの両腕をあっさりとユルゲンは片手で締め上げた。縄で縛られていた箇所は、無遠慮に扱われさらに悲鳴を上げる。

 馬乗りされる形になりながらライラは必死で身を捩って足をばたつかせた。