冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「メーヴェルクライス卿はまだよかった。お前を館の中に閉じ込め、祈りを捧げる程度だったのだから。だが、フューリエンを欲しがる人間が彼のような者ばかりとは限らない」

 ライラは震え出す自分の体をぎゅっと抱きしめる。改めて自分の置かれていた状況は異質なものだったのだと悟った。

 ひっそりと暮らしていた自分が孤児院の外に出たことで、事態が思わぬ方向に進んでいるのだという現実にも。このまま孤児院に戻ったとしてもシスターや子どもたちに迷惑をかけてしまう可能性もある。

「心配しなくていい。これもなにかの縁、なによりお前は我が王家にとって感謝してもしきれないほどの人物と縁のある人間だ。……正確には被害者とでも言うべきか。お前の面倒は城でみてやろう」

「ですが」

「なに、どうせ一生の話ではない。ときにライラ、お前はいくつになる?」

 王の脈絡のない質問に、アードラーのふたりは意図が読めない。しかしライラは顔を強張らせ、硬い声で返事をした。

「……まもなく十八になります」

「ならば“もうすぐ”というわけか」

 含んだ笑みを浮かべる王に、ライラは畏怖の念を抱く。 

「陛下、あなたはどこまで私を……フューリエンについてご存知なのですか?」

「どうだろうな。少なくともお前の知っている情報は把握している、とでも言っておこうか」

 もったいをつけた言い方だった。会話についていけない男共に説明してやるようにクラウスは軽い口調で語りだす。