けれどライラとの関係がどこか心地よくて、それを壊す真似はしたくなかった。この結婚生活自体泡沫なものなのに、自分はなにを求めているのか。

 明確にできず燻る感情をライラ本人やルディガーにぶつけてもどうしようもない。残るのは自己嫌悪だけだ。

 戸惑いを隠せないでいるスヴェンに対し、ルディガーが大きく息を吐いた。

 とりあえず応接用の椅子に座るよう促し、スヴェンはおとなしく従う。大きめのソファに乱暴に腰を落とすと、机を挟んで真向かいにルディガーも座った。

 今度は対等な格好で目線を合わす。

「ひどい顔だな。お前のそんな姿、久しぶりに見るよ」

 親友を亡くしたとき以来になるのか。あれからスヴェンは不愛想なうえ冷厳冷徹さを貫いて他人を寄せ付けなくなった。

 逆にルディガーはいつも愛想よくする分、けっしてこちらに踏み込ませたりせずにうまく他人をかわしてきた。

 けれどいつも、いつまでも変わらずにいなくてもいい。自分たちは物ではない。生きている限り誰だって変わっていく可能性を秘めている。

「ま、溜め込んでもしょうがないだろ。スヴェンは意外と他人の心の機微については敏いくせに自分のことはからっきしだからな」

 誰のせいで……と、いつもなら冷たくなにかを返すところだ。しかしこのときはスヴェンはなにも言わず眉をひそめただけだった。