「もしも俺とスヴェンが本当に本気でやりあったらどうする?」

 仮定の問いかけにセシリアは目をぱちくりとさせる。そして眉尻を下げた。

「わざわざ聞きます?」

「そりゃ、もう。是非、聞きたいね。命令してでも」

 セシリアは一度ルディガーから視線を逸らし、しばらくしてから観念したように息を吐く。再度彼としっかりと目を合わせ口を開いた。

「……あなたのために命を懸けますよ。私はあなたのものですから」

 照れもなく、まるで宣誓だった。そのまま彼女は部屋を出ていく。ひとりになった部屋でルディガーは机に項垂れた。

 前髪を掻きながらも口元には笑みが浮かんでいる。

「あー、まったく。スヴェンもいい仕事をしてくれる」

 それからまもなくドアが乱暴に開く音が響いた。木製のドアが揺れ、軋む。敵の襲撃でも起こったかのような前触れのなさと勢いだが、予想はしていた事態だ。

「おはよう、スヴェン」

 わざとらしく笑顔で声をかけたが、気迫に満ちた相手には届いていない。足を動かし大股で近づいてくる。そしてバンッという力強い音で机が鳴り、空気が震えた。

「なぜあいつに余計なことを言った?」

「余計なこと?」

「とぼけるな」

 スヴェンは今にも剣を抜きそうな熾烈さでルディガーにつっかかる。一睡もしていないのもあってか凄みも半端ない。