冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

迎冬会を明日に控え、今日は一段と忙しい。早朝からルディガーは部屋でセシリアと段取りを確認していた。そろそろ彼がやって来るはずだ。

「さーて、セシリア。どうやら俺の骨を拾う日がついに来たようだぞ」

 机を挟んで一通りの説明を終えた副官に対し、ルディガーはおどけて言ってのけた。ルディガーが椅子に座り、セシリアは立っているので彼女は上官を見下ろす形になる。

「拾いませんよ。団員同士の私闘は厳禁ですし、ましてやアードラー同士なんて前代未聞です」

「冷たいなー。俺がどうなってもいいのか?」

「まさか。あなたがそこまで考えなしじゃないのはちゃんとわかっていますから」

 その言葉にルディガーが目を見開く。代わりにセシリアは微笑んだ。

「もちろんバルシュハイト元帥においてもです。私は席をはずしますね。いない方がいいでしょう」

「どこへ行くんだい?」

 ルディガーの問いかけにセシリアは間を置かずに答える。

「彼女のところです。誰かがフォローする必要があるでしょうから」

「そこまで気を回すとは、さすがは俺の副官」

「では、ご健闘をお祈りします」

 心配など微塵もしていない面持ちでセシリアは部屋を出ていこうとする。

「セシリア」

 しかしドアのところで呼び止められ、セシリアは再び上官に足を向けた。