冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「ごめ、ん、なさ……ごめっ……」

 苦しくて、許しを乞うかのごとくライラは謝罪の言葉を口にする。

 スヴェンの役に立ちたいと思っていた。事情があってでも、時間が限られているとしても、そばにいる間少しでも必要としてもらえたら嬉しい。

 私、間違ってた。

 それ以前に自分の存在が、国王陛下の命令とはいえ自分と結婚してしまったことが、彼を縛っているのだと痛感する。

 早く泣き止まないと、と気だけ焦るが一度決壊した涙腺のコントロールは不可能だ。そちらに気を取られていると、不意に正面からスヴェンに抱きしめられた。

 回された腕は痛いほど力強く、スヴェンの顔を確認するどころか息さえできない。ややあってスヴェンの声が耳元で響く。

「違う、違うんだ。お前は悪くない」

 いつになく必死さを孕む声色なのが、余計にライラの胸を詰まらせる。

『お前が悪いわけじゃない』

 ……スヴェンはいつもそう言ってくれる。

 スヴェンの優しさが今は痛い。この瞳のおかげで、散々自分を嫌いそうになった。けれど、自分の存在がここまで嫌になるのは初めてだ。

 早く、早くこの瞳の色が消えてしまえばいい。そうすれば彼を自由にできるのに。

 スヴェンはなにも言わずに、ただライラを抱きしめる。部屋には声にならない嗚咽だけがいつまでも響いていた。