冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「嬉しかったです。やっと誰かに求めてもらえた。私を選んでもらえたと思いました。ですが彼は私を娘としてではなく『フューリエン』と呼び、祈りを捧げるようになったんです」

 引き取られた先での生活は孤児院にいたときに比べると、けっして悪くはなかった。

 まっさらな服、温かい食事、大きなベッドなどが宛がわれ、世話はファーガンの使用人である中年の女性がすべてを請け負い、ライラに必要なものを与えた。

 ただし、いつもライラのそばには誰かがおり、見張られている状態だった。外に出ることも許されず、ファーガンは毎日のようにライラの元を訪れ『私をお助けください』と懇願するように祈っていく。

「彼は、おそらくなんらかの病に侵されていたんだと思います。私にはなにも力はないと言っても聞き入れもらえず、日に日に弱っていく彼を見ることしかできなかった。私の瞳がこんな色でなければ……」

 そこでライラは罪を告白するかのごとく深く頭を沈め、切羽詰まった声で続けた。

「陛下、たしかに私は初代国王の前に現れたフューリエンと同じ瞳の色をしています。しかし、私はなにも特別な力を持ちません。陛下にとって有益なものをもたらすことはなにも……」

「面を上げろ」

 抑揚なく放たれた王の命令に従い、ライラは唇を真一文字に引き結び、ゆっくりと頭を上げた。

「その瞳を今一度、見せてくれないか」

 ライラは髪に隠れたままでいる左目を見せるように髪をかきあげる。肌に触れる空気も自分に向けられる視線も突き刺さりそうなものだった。

 けれどライラは瞬きすることなく王をじっと見つめる。クラウスの顔が切なげに歪んだ。