冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

マーシャはだめだ。ただでさえ日中、ずっとそばにいてもらっている。

 どうすればいいのか。どうしてスヴェンとジュディスが会うためにこんなにも懸命に案を巡らせないとならないのか。

 本当は考えたくもない。けれどそれ以上にスヴェンの迷惑には、足枷にはなりたくない。

 夜を共に過ごしてくれる人物。ライラが思いつくのは、もう残すところ一人しかいない。

「エリオットにお願いして、そばに……」

 彼の名前をライラが口にした瞬間、スヴェンは反射的にライラの肩を掴み、背もたれに押し付けた。

「ふざけるなっ。そんな簡単に代わりがきくなら、なんのために結婚したんだ!」

 今までにない激しい剣幕を見せられ、ライラは大きく目を見開いたまま固まる。

 時を止める静寂。そして瞬きひとつしない左右で異なる色の瞳が揺れ、大粒の涙がとめどなく零れだした。

 その姿にスヴェンは声を呑む。驚いたのは当の本人もだった。泣いていると自覚した刹那、ライラは慌てて下を向く。

 涙を止めようと深く息を吸うが、うまくいかない。こんなふうに衝動的に泣くのはいつ以来なのか。

 目に力を入れようとするも、涙は重力に従って勢いをますばかりだ。雨粒のように降って手元を濡らしていく。感情が抑えきれない。