冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

スヴェンにとって、ライラが思うほどに一緒に寝るのもキスも特別なものじゃないと突き付けられた気がした。

 スヴェンは先ほどからなにも言わず、沈黙が重く肩のしかかる。彼が今、なにを考えているのか想像もできないが、ライラはスヴェンに言わなければと決めていたことがあった。

 一度、唇をきつく噛みしめ、声にしていく。

「あの……私たち、結婚はしているけど、事情があってで、しかもずっとの話じゃないし。だから、私を気にせず……彼女に会いに行って、いいから、ね」

 ジュディスのやり方で自分はけっして彼を温められない。彼女の代わりにはなれない。だからライラはこう言うしかできなかった。

 結婚しているからといって操を立ててもらう必要もないし、煩わしいとも思われたくない。

 それなのにスヴェンに向けての発言が、突き刺さって自分に返ってくる。そして、ずっと口を閉ざしていたスヴェンがここにきておもむろに唇を動かした。

「……今は、お前がいるのにか?」

 反射的にライラは顔を上げた。ここでライラは部屋に来て、初めてスヴェンの顔を瞳に映す。

 整った顔を歪め、その表情は怒っているというよりもつらそうだ。ライラはスヴェンの言葉の意味を必死に咀嚼した。

 スヴェンはライラの護衛のために結婚して共に夜を過ごし、こうしてそばにいる。だからライラが許可したところで、別の問題が発生するのに気づいた。

「えっと……エルンスト元帥もセシリアさんも忙しいなら……」

 もし彼がジュディスに会いに行くなら、その間のライラの身はどうするのか。そういう話だと捉えた。