冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

「あの、私……スヴェンに謝りたくて」

「謝る?」

 訝し気な顔で彼女を見下ろす。ライラがなにを言おうとしているのかまったく予測もつかない。

 ライラは一度大きく息を吸い込み、声を振り絞ろうと喉に力を込めた。

「ジュディスさんと……スヴェンの、こと。エルンスト元帥から聞いたの。私、勝手に色々勘違いしちゃって……」

 スヴェンは大きく目を見開き、まさかの話題に息を呑んだ。

 ライラは、頭の中で何度もリフレインしているルディガーの言葉を噛みしめる。

『温めるっていうのはそういう話じゃない。男女の睦事を指すのさ』

 ここまで直接的な言われ方をしてわからないほど、ライラも子どもじゃない。けれど衝撃が大きすぎてうまく受け止められなかった。

 誰が、誰と、なんの話なのか。からかわれたのかと思いたかった。けれど冷静に考えれば考えるほど、符号していく。

 スヴェンは自分よりもずっと大人の男で、そういった関係の女性がいてもおかしくない。ましてやジュディスはすごく綺麗で艶っぽかった。

 甘い香りを漂わせ、顔も、体も、雰囲気も男性が好みそうな女性だ。ライラとはなにもかも正反対だった。

 比べる必要はまったくない。自分と彼女はスヴェンにとって、きっと立場も距離も全然違う。

 納得して、想像して、胸が切られるように痛んだ。どうしてか涙が溢れそうになるのを必死に我慢する。

 理由がはっきりしない感情に支配されるのが嫌で、でも確実に自分が傷ついているのはわかった。