冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

マーシャに付き添われ、ライラが自室に戻っていった後、部屋にはルディガーとセシリアのふたりになった。その時を待ってセシリアが口を開く。

「なぜ、彼女にあんなことを言ったんですか?」

「理解できない?」

 微笑を浮かべ尋ね返すルディガーに、セシリアは眉を寄せた。

「意図までは。あなたが身内絡みだと、火種を見つけたら水ではなく薪を放り込むタイプなのは存じ上げていますが」

 仰々しい言い方にルディガーは苦笑する。

「上手い例えをしてくれるね」
 
 セシリアは笑えない。一度瞳を閉じて、息と共に言葉を吐き出す。

「どうなっても知りませんよ」

「ま、なるようになるさ。それに燻るくらいならいっそのこと派手に燃えた方がいいときもあるだろ。一回荒れてみればいい」

「彼女には気の毒な話ですね」

「しょうがない。俺はどちらかと言えばスヴェンの味方だからね」

 セシリアは呆れた面持ちで上官を見つめる。するとルディガーは軽くウインクを投げかけた。

「もちろん、一番はセシリアだよ」

 ルディガーの言葉はさらっと流し、セシリアは先ほどのライラを思い出す。意気消沈として、迎えにきたマーシャと共に部屋に戻っていった姿は痛々しかった。

「……本当に、男の人って勝手です」

 ぽつりと呟いた言葉は、隣の上官には届かない。セシリアは頭を切り替え、仕事の話をルディガーに振ったのだった。