一方、ライラはルディガーの迫力に圧される。

「だめ、でしょうか?」

「だめというか、なんというか……」

 ルディガーは苦々しい表情を浮かべた。相思相愛なら別に問題ないし、これ以上は親友のこととはいえ聞くべきではない。

 しかしライラの次の発言に自分の考えが間違っていたのだと気づかされる。

「ジュディスさんの代わりに、私が温めようと思ったんです。眠れないのと寒さを紛らわすのをアルコールに頼るのはよくないですから、シュラーフ入りのお茶を調合してみたり。一緒に寝るのもその延長で……」

「ジュディスの代わり?」

「はい。ジュディスさんが“温めてあげる”って言っていたので。よく眠れるお酒を出してあげるってことじゃないんですか?」

 ライラの目に曇りはなく大真面目だ。酒場で働いているとの情報も合わさり、なにも疑っていない。

 ルディガーは口元に手を添え、しばし考えを巡らせる。そこにセシリアが戻ってきた。

「ライラ」

 ルディガーの顔には笑みが浮かんでいる。しかし、いつもの爽やかなものではなく、なにか裏がありそうな怪しさもあった。

「いいことをひとつ教えてあげよう」

 続けて彼から告げられた言葉に、ライラは顔を真っ赤にしてから泣き出しそうな表情になり、セシリアは綺麗な顔を歪め、不快感を露わにした。