迎冬会を間近に控えたある日の午後、ライラはルディガーとセシリアの元を訪れていた。ちょうどふたり揃って部屋にいるというのをスヴェンから聞いて来たのだ。

 スヴェンも含めアルノー夜警団の団員たちは、ここ最近迎冬会のため準備のためずっと忙しくしている。

 外部からの出入りも多く、現場の警備などは他の団員が当たっているが、要人の警護や重要な招待客との打ち合わせに同席したり、国王に連れ添う機会も多い。

 デスクワークは山ほどあるが、ほんのひと時の休息というわけだ。ルディガーに勧められ、部屋の来客用のテーブルを囲み三人でお茶をいただく。

 出したのはもちろん、シュラーフなしのレシピの方だ。

「飲みやすいし、いいね、これ」

 お茶を一口飲み、すぐさまルディガーがそつなく褒める。

「ほっとする味ですね」

 セシリアも味わいながら素直な感想を漏らした。

「おふたりにも気に入っていただけてよかったです」

 ライラも笑顔になり、ソーサーにカップを戻す。そのタイミングでルディガーがやや身を乗り出し、保護者ばりに尋ねてきた。

「どう? あいつとの生活は上手くいってる? なにか困ってはいないかい?」

 どちらかといえば、スヴェンの友人として気にしているのか。ライラはルディガーの心配を吹き飛ばすように笑った。

「お気遣い、ありがとうございます。でも、スヴェンにはすごくよくしてもらっていますよ」

「ライラはもっとわがままでもいいんだぞ。あいつ、口数も少ないしなにを考えているのかわからないこと多いだろ」

 その言葉にライラは心に引っかかっていたものを思い出す。固まっているライラにルディガーは首を傾げた。