グナーデンハオスと呼ばれる王都の端に位置する施設は、母体は教会らしきものでシスターらしき女性がライラのように事情があって両親と一緒に暮らせない子どもたちを引き取り、世話をしていた。
そこでも目に関して随分と辛い思いもしたが、グナーデンハオスがライラにとって人生における二番目の家であり、シスターや仲間は家族でもあった。
暮らしはけっして豊かなものではなかったが、シスターは子どもたちに字を教え、生活だけではなく必要な教育も与えた。
それはいつか、すべての子どもたちがここから出て不自由のないようにという配慮だった。
おかげで養子として出ていく場合や、独立して孤児院を後にする者。それぞれ歩む道が違うものの一定の年齢が来れば、皆巣立つことができた。
しかしライラは自分の瞳の色のことで引けを取り、髪でいつも左目を隠すようにしていた。
養子を希望する貴族たちが見学にやってきても前に出ることもできず、次々と引き取り先が決まって孤児院を離れていく仲間たちを何度も見送ってきた。
いつしかライラは子どもたちを見る側になっていて、シスターのようにここに仕えるのもいいかもしれない、そう考えるようになっていた。
そして木々が雨に濡れて鮮やかに生い茂り、孤児院の庭に咲いていたアナガリスが青色の花を咲かせていたある日、夏の訪れを知らせる空気に混ざりにメーヴェルクライス卿ファーガンがグナーデンハオスにやって来たのだ。
「彼はどういうわけか私を指名し、是非自分が引き取りたいと申し出てきました」
ライラは一度目を閉じる。ありありと蘇る光景を頭に静かに浮かべていた。
そこでも目に関して随分と辛い思いもしたが、グナーデンハオスがライラにとって人生における二番目の家であり、シスターや仲間は家族でもあった。
暮らしはけっして豊かなものではなかったが、シスターは子どもたちに字を教え、生活だけではなく必要な教育も与えた。
それはいつか、すべての子どもたちがここから出て不自由のないようにという配慮だった。
おかげで養子として出ていく場合や、独立して孤児院を後にする者。それぞれ歩む道が違うものの一定の年齢が来れば、皆巣立つことができた。
しかしライラは自分の瞳の色のことで引けを取り、髪でいつも左目を隠すようにしていた。
養子を希望する貴族たちが見学にやってきても前に出ることもできず、次々と引き取り先が決まって孤児院を離れていく仲間たちを何度も見送ってきた。
いつしかライラは子どもたちを見る側になっていて、シスターのようにここに仕えるのもいいかもしれない、そう考えるようになっていた。
そして木々が雨に濡れて鮮やかに生い茂り、孤児院の庭に咲いていたアナガリスが青色の花を咲かせていたある日、夏の訪れを知らせる空気に混ざりにメーヴェルクライス卿ファーガンがグナーデンハオスにやって来たのだ。
「彼はどういうわけか私を指名し、是非自分が引き取りたいと申し出てきました」
ライラは一度目を閉じる。ありありと蘇る光景を頭に静かに浮かべていた。


