「そっか、よかった」

「不味いものでも飲ませる気だったのか?」

「まさか! でもスヴェンが受けつけてくれる味か不安だったから」

 ライラは目を細めて答える。スヴェンはさらにカップに口をつける。しかしここでライラが予想もしない反応をした。

「あ、待って。それ以上はストップ」

 思わずスヴェンは目を見開き、怪訝な顔でライラを見た。するとライラは視線を逸らし、ややあって渋々といった感じで白状しだす。

「……実はね、それシュラーフが入ってるの」

 スヴェンは再度、カップの中の液体に注目する。あれはかなり独特の味がするというのに、まったく見抜けなかった。そんなスヴェンにライラは種明かしをする。

「シュラーフ単体だと飲みづらいから、ほかの薬草と合わせてみたの。薬草園のものだけだと限界があるから、合いそうなハーブとかと組み合わせてみて……」

 ライラはこの城に来たときから時間があれば薬草園にも足を運び、自分のできる範囲で植物の世話をしていた。

 おかげで荒れ放題だった内部は随分とすっきりし、冬が近づいているので少しばかりだが花を咲かせたものもある。

 ライラはにこやかに説明を続けた。

「それからね、生で使うとどうしてもえぐみが出るから、乾燥させたものを試してみたの。あとは配合や淹れ方を色々変えて、ようやく飲んでもらえるものになったから」

 そこでスヴェンはここ最近のライラの行動に納得がいった。

「お前が街に行って薬種店で買い物したかったのは、このためだったのか?」

 だとしたら、とんだお人好しだ。もっと自分のために、なにか欲しいものがあるからだと思っていたのに。