冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない

 今は国王という立場にある彼だが、元々スヴェンとルディガーとは幼馴染みの間柄だった。王の視線はライラに移る。

「名はなんという?」

 身の置き方に迷っていたライラは慌てて膝を折り頭を沈める。

「ライラ・ルーナと申します。お目にかかれて光栄です。クラウス・エーデル・ゲオルク・アルント国王陛下」

 ライラは声を震わせながらも懸命に体裁を整えようとする。目まぐるしく変わる自分の状況に頭も気持ちもついていかない。

「楽にしろ。取って食おうというわけじゃない。突然のことでお前も混乱しているだろうが、いくつか質問に答えてほしいんだ」

「はい、陛下。なんなりと」

「まずひとつ、お前と同じように片目が金色の者は他にいるのか?」

 その質問の意図するところはわからないが、ライラはとにかく無礼がないよう王の問いかけに答えるのが精いっぱいだった。

「直接は存じ上げません。ですが同じ血を引く者の中には、私のような者もいると聞かされました。現に私の伯母も片方の瞳が金色だったと聞いています。ただ私は幼少の頃に両親を亡くし、孤児院で育ったものですから……」

「なるほど。あの男の元へ来た経緯は?」

 そこで、ライラはぽつぽつと自身のことを語りはじめる。

 生まれは、隣国との境目にまたがる大山脈の山あいにある小さな村だった。両親はライラが生まれて程なくし流行り病で他界。だから両親の記憶はライラにはあまりない。

 伯母の元で育てられ、慎ましく平穏に暮らしていたが、物心がつくかつかないかの頃に伯母も亡くし事態は一変。身寄りのなかったライラは村人に連れられ、孤児院に入ることになった。